日本電産、米エマソンの産業用モーター事業を買収

日本電産は、米電機大手エマソン・エレクトリック(ミズーリ州)の産業用モーターや発電機などの事業を買収する。買収額は12億ドル(約1200億円)で日本電産のM&A(合併・買収)では過去最大となる。産業用モーターの品ぞろえを増やすほか欧米でエマソンの販売網を活用する。製品と地域の空白領域を埋め、シェアと事業の効率を引き上げる。  買収する事業はモーターの制御機器なども含まれ、2015年9月期の売上高は16億7400万ドル。米英仏、中国、インドなどのグループ会社と、約9700人の従業員を引き受ける。年内に買収を完了する予定だ。  主に生産設備に搭載する産業用モーターのほか、工場や事業所が自前で発電するのに使う発電機の事業を獲得する。日本電産が既に手掛けている事業だが、弱かった低圧の発電機や欧米でのモーターの販路を確保できると判断した。エマソンが持つ米ゼネラル・エレクトリック(GE)や仏アレバといった世界の優良顧客との取引を引き継ぐ狙いもある。  日本電産は主力のハードディスクドライブ(HDD)用精密小型モーターの市場が成熟するなか、産業用や車載用のモーターや関連機器の強化を急いでいる。2日に都内で記者会見した日本電産の永守重信会長兼社長は「(成長市場の)産業用モーターで世界首位になるため、あと3社は買収したい」と語った。  日本電産の16年3月期の連結売上高は1兆1783億円。21年3月期に2兆円以上を目指し、このうち5000億円をM&Aで上積みする計画。新興国の景気減速を受け、欧米の部品大手などの業績が低迷して買収しやすくなるなか積極的にM&Aを仕掛ける考えだ。  永守氏は会見で今回の案件について「絶妙のタイミングで買えた」と強調した。年に数件のM&Aを手掛けることも珍しくない日本電産だが、大型案件は14年末に買収合意した独自動車用ポンプ大手GPM以来、1年半ぶり。「昨年は円安で買収額も高くなり、見送って待っていた」(永守氏)ためだ。  今回の買収事業は、収益力の指標の一つである「EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)」が15年9月期に1億7500万ドルだった。14年9月期は2億6000万ドル、13年9月期は2億7300万ドルと好調で、買収額もつり上がっていた。高値づかみで減損処理を迫られれば利益を圧迫するため「じっと我慢していた」(永守氏)という。  エマソンからは10年にも別の家電・産業用モーター事業を買収している。再び同社を選んだのは「名門企業でブランドが世界に通用する」(永守氏)メリットが大きいと判断したからだ。入札には中国企業も参加していた。10年に買収した後の事業運営でエマソンと信頼関係を築いたため、提示額が低い日本電産が落札できたという。  12億ドルの投資はM&Aを繰り返して成長してきた日本電産にとって過去最大規模の買収となる。高いブランド力と幅広い顧客基盤を持つ米名門企業の事業買収で主軸の産業分野を一気に拡大する。今回の案件との相乗効果を見込む次の買収を狙い通り実現し、計画通りに利益改善を進めていけるかが問われそうだ。